人の褒め方にも作法がある?―人間関係における正しい褒め方―
人間は他人に褒められるとその人のことを好きになる
「○○さんって凄いんですね!」
そう言われたときのことを思い出してください。
おそらく多くの人は、嬉しかったり楽しかったりポジティブな気分になるのではないでしょうか?
そして、自分のことを褒めてくれた相手のことを好ましく思うのではないでしょうか?
このように相手のことを褒めて、自分のことを気に入ってもらおうとする方略を心理学では「取り入り」と呼びます。
しかしながら、この取り入りにはいくつかやり方があり、間違ったやり方をしてしまうとむしろ相手から嫌われてしまうこともあります。
取り入りがうまくいかない時
取り入りは、「気に入られよう」という意図が見え見えの時、極端な時、長期間続けた時に逆効果になり、取り入りを使うことで嫌われるようになってしまいます。
例えば、誰もが100点を取れるようなテストで「○○さんって頭が良いんですね!」なんて言われても嬉しいどころか、「ちょっと大げさでは……」と思ってしまうでしょう。
また、いくらなんでも、何度も何度も褒められ続けると、「この人には何か裏があるのではないか」と感じてしまうでしょう。
これらに加えて、その人物にとって当たり前すぎることを褒められても、取り入りの効果は上手く得られないこともあります。
例えば、ノーベル賞の受賞者に「あなたは頭が良いですね」と言っても、あるいは誰もが認める資産家に「あなたはすごい大富豪なのですね」と言っても、むしろ時には皮肉にすら受け取られてしまうかもしれません。
効果的な取り入りとは?
まず、取り入りはそう何度も何度も使ってはいけません。
「ここぞ」という時に、しかも言葉そのものは過剰に飾り立てないように言う必要があります。
「あなたはダイヤモンドのように美しい」と言われたって気持ちが冷めるだけなのです。
また、その褒め方が質素な分、正しい取り入りは褒める内容が重要になってきます。
その人にとって本当に価値があり、しかもその人が価値を置いていることに対する自分の能力に疑問を抱いている時に取り入りは最も効果を発揮します。
例えば、ノーベル賞受賞者が女性であった場合、彼女は既にわかりきっている「頭が良い」ことよりも、自分が美人であることを褒められる方が喜ぶかもしれません。
あるいは仕事を一生懸命頑張っているけど、上手く成果が出ていないイケメン男性がいたら、彼の容姿について褒めるよりも仕事ぶりについて褒めた方が効果が得られるかもしれません。
このように、他人を褒める時にはなんでもかんでも褒めておだてればいいというものではなく、その人がどんな価値観を持っているのか、どんな言葉を欲しているのかをちゃんと見極める必要があります。
たまに「初対面で褒めるのはダメ」「親しくない人のことを褒めるのはダメ」なんて話を聞きますが、それは初対面や親しくないことが問題なのではなく、相手のことをよく知らないのに褒めようとしたことが取り入りを失敗させるだけなのです。
ですので、初対面でもちゃんと相手の話に耳を傾け、相手のことを理解していれば取り入りを使っても全く問題はありません。
ちなみに、美人やイケメンは自分の容姿が優れていることを褒められても、相手に対して魅力を感じない傾向があることが分かっているため、もしも容姿が優れた人を褒める時には、容姿以外の内面を褒めた方が効果的だと言えます。