恋愛は性欲の建て前でしかないのか?
恋愛感情は性欲をキレイに言い換えただけ?
たまに「恋愛なんて性欲をキレイに言い換えただけだよ」と言う方がいらっしゃいます。
確かに、生物的に、あるいは進化的に見れば、恋愛感情のシステム自体は性交渉をするために存在すると考えるのが妥当でしょう。
では、本当に性欲と恋愛は同じもので、その表現だけが違うものなのでしょうか?
そこでまずは、恋愛と性欲がどんな特徴を共有しているのかを心理学や脳科学の研究から分かっていることについてみていきます。
恋愛と性欲の共通要素
恋愛と性欲の共通要素としては以下のようなものがあります。
①非常に強力に人を惹きつける
②特定の報酬(恋愛の場合は愛する人で性欲は性行為)に意識を集中し ている
③コントロールするのが非常に難しい
④中枢神経系のドーパミンの活性化の高まりと関連する
確かに、このように見てみると恋愛と性欲はかなり似ていると言ってもいいのかもしれません。
ただし、これらの間には数少ないけれども、それでいて重要な違いがあります。
恋愛と性欲の違い
この2つの間の最も大きな違いは、その「強さ」にあります。
たとえば、たった一度性欲が満たされなかったからといって人が自殺したりすることはありません。
もちろん、何度も何度も性欲が満たされなかったとか、今後も性欲が満たされない可能性を考慮したことで死亡を選択することは有り得るでしょう。
ただし、恋愛は「たった一度の失敗」でも人を自殺に追いやることもあるのです。
他にも、恋愛によって人は誰かを殺害したりすることもあります。
ロマンティックな愛は性欲よりもかなり強力です。
実際、恋人に対して強い愛情を感じていると報告している人が恋人に振られると、その約40%がうつ病に近いレベルでの抑うつを感じるようになることが分かっています。
そして、恋愛と性欲には他にも違いがあります。
恋愛の多くは性欲を伴いますが、愛の中には性欲を伴わない恋愛もあるのです。
長年連れ添った夫婦関係のような「穏やかな愛」では、相手に対する強い尊敬の念や信頼が見られますが、必ずしも性欲を感じていないことが分かっています。
彼らの関係は友情や親子関係に近いのですが、それともまた違う特徴を持った、恋愛独自の関係と言っていいでしょう。
このように見ると、性欲と恋愛は非常に似ているけれども別のものであり、ただ言葉で言い換えただけではないと言えるでしょう。